倒壊よりも「火事」が恐ろしいということ

地震によって建物が倒壊することはたしかにあります。ですが、一般的なここ10年前後に建てられた建造物であれば、倒壊は余程の巨大地震でなければ起こらないでしょう。震源が住居の真下であるとか、よほど地盤が悪い、という条件が揃わなければ、そうそう住居が倒壊するということはありません。最も、先の大震災では未曾有の震度を記録しました。そうなると、もはや現行の耐震基準も当てにはならないところです。家屋が倒壊してしまう危険を感じると、人は外に飛び出してしまうものですが、それも危険な行為です。揺れが収まらないなか、不用意に外に飛び出してしまうと、嫌の屋根の「かわら」が落ちてきたり、電柱が倒れてきたりと、家屋の中よりも危険な状態に陥ることがあります。
それに、家屋が倒壊するほどの揺れでは歩くこともままなりません。家の外に飛び出せるほどの揺れであれば、家屋は倒壊しませんから、机の下に身を隠すなどして揺れが収まるのを待ちましょう。
揺れが収まったあと、倒壊した古い家屋もあれば無事に残った家屋もあるでしょう。どちらにしてもライフラインや都市機能はマヒしてしまうものです。電気やガス、水道が止まってしまい、余震にも警戒が必要な状態であれば、避難を余儀なくされます。
このときは電気はとまっていたとしても、電力会社は全力で復旧を試みます。そうしなければ人々の暮らしに大きな支障を与えてしまうからです。
住人が避難した後、無人の家屋に電気が通ることになります。この時が、一番危険です。
損壊した家電製品や、通電装置に電流が流れると、漏電を起こしてしまい、家事の元になる場合があります。地震直後の家事は、震災の被害の中でも甚大な損害を与えるものです。
道路網が寸断され、そして各地で被害が起こっているため、消防系統はまともに機能しません。その中での多発的な「火事」はもはやなすすべなく家屋を燃やしていきます。
地震そのものでは倒壊しなかった住居も、この家事で全焼してしまうのです。家にはそれまでの財産や思い出があるものです。それが一気に燃えてしまうのです。
避難の際は、ブレーカーを切り、家電製品のコンセントなどは全て抜いた状態にしましょう。